2022年9月23日金曜日

小児頭部外傷

夜に小児外傷が来て対応した、というイベントがありました。


小児の意識障害
客観的評価するには有用だが、判断はなれないと難しい→母親にいつもとなにが違うが聞けばよい。
小児のGCSの取り方。
・EとMはほぼ同じ
・Vは笑顔で声に反応、物を視線で追えば5
・あやして泣きやむ場合や、反応が不適切な場合は4
・うめいていれば3
・泣きやまない場合や落ち着きなければ2

22,722人の小児外傷の統計(CHALICE rule)
以下の項目いずれか一つでもあれば 
感度98.6 (96-100)%、特異度87 (86.5-87.4)% LR+=7.6 (7.3-7.8)、LR-=0.02 (0.01-0.04)
蓋内損傷を予測できる。
                            Arch Dis Child. 2006 Nov;91(11):885-91
・高エネルギー外傷(高速交通外傷、3M以上からの転落、高速の物質衝突)
・意識消失>5分、健忘>5分
・意識障害(意識朦朧、GCS<14、1歳未満ではGCS<15)
・外傷後けいれん
・穿通・陥没外傷疑い、蓋底骨折疑い
・神経巣症状
・嘔吐≧3回
・虐待疑い
・大泉門膨隆
・1歳未満で5cm以上の血腫・裂創

2歳以上と2歳未満を分けて考える
2歳以上では症状と意識障害だけで蓋内損傷はほぼ検出可能とされる。
・1歳未満では軽度の外力でも蓋内損傷が多いだけではなく、無症候性蓋内損傷が多い。
・無症候性蓋内損傷は生後6ヵ月未満で27%、生後6-12か月で15%、1歳以上では0% Ann Emerg Med. 1998 Dec;32(6):680-6. よって、1歳未満では蓋内損傷の可能性を症状だけで判断してはいけない。

皮血腫の有無を診る
・昔は皮血腫は蓋内損傷に関してはリスクではないとされた(AJR Am J Roentgenol. 1984;143:661-4)が、現在では2歳未満の小児に対して、症状+皮血腫で蓋内損傷の感度95-100%とされ非常に重要と考えられている。
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・後・側の血腫と比較して前の血腫はリスクは低い(Pediatr Emerg Care 2001;17:88-92)
生後3か月未満では症状+皮血腫でも8%の見落としがあり、現時点では軽微な外傷でない限りCT施行が勧められている。Pediatrics. 1999 Oct;104:861-7

小児CTの基準
以下のいずれかあればCT
・常識的なリスク(高エネルギー、意識消失・健忘、けいれん、骨折疑い、神経症状、頻回嘔吐)
・忘れていけない虐待疑い、大泉門膨隆
・1(-2)歳未満の皮血腫/裂創
・生後3ヵ月未満の軽微ではない外傷
小児のCT検査には親が立ち会う。
子供の不安感をとり、鎮静剤なくCTを成功させるため
・われわれの被爆を避けるため
それでも被爆・手間・コストなどの問題が大きい。
・ガイドラインに沿うとCTが8倍に増える(Emerg Med J 2005;22:541)

CTを減らす工夫を
リスクが低いとされる外傷は以下の2つ
・1M以下で、床が固くない場合の転落
・2時間以上無症状
CT迷う生後3か月以上だが、CT撮影難しい場合
CTが正常でも後に症状出る可能性あることからむしろ症状が重要であること」を説明し、2時間の経過観察。
・単純レントゲン写真。
・家族が納得する。
・単純Xp陰性でもCT陰性とは言えないが、骨折あれば蓋内損傷が0.6%から29%となる(Pediatrics 1999;104:861-7)

以上です!

2022年9月21日水曜日

胸水は1回にどれだけ抜いていいかは再膨張性肺水腫を理解すれば自ずとわかる。

最近胸水穿刺をする機会が多いのです。

胸水に対して胸腔穿刺をしてときには慣例として大体1000ml~1500mlの除水に留めるのですが、それは「再膨張性肺水腫:REPE」を防ぐためだと教わります。ただ、どれだけこの病態について知っているかといわれるとどうでしょう?ということで、再膨張性肺水腫の機序は?発生頻度は?リスクは?が今回のクリニカルクエスチョンです。


早速ですが、発症機序については、現在のところ完全には明らかになっていません。ただ現在の仮説として、肺の虚脱があるところに陰圧がかかり、肺の再膨張が起こると、「肺血管の透過性亢進と肺胞膜の障害をきたす」ことが機序だと推測されています。詳しく言うと、「肺胞虚脱時には低酸素により血管内皮細胞障害が起こっていて、さらには低酸素性肺血管攣縮による虚血が生じているところに、肺の再膨張が生じると、虚血再還流障害や再酸素化による障害が起こる。 その結果として血管作動性物質や活性酸素の放出、IL8やLTB4などの好中球遊走因子の分泌などが起こることで肺の毛細血管透過性亢進が起こるために肺水腫が発症すると考えられている、といったところでしょうか。J Cardiothorac Vasc Anesth. 2007 Dec;21(6):887-91. J Emerg Med. 2003 May;24(4):361-7.

 

REPEのリスクは大きく、ズバリ3つです。

  1. 肺胞虚脱の程度(肺野の30%以上)
  2. 肺胞虚脱期間(3日以上)
  3. 再膨張の速度

 

以下、詳細です。

  • 肺胞虚脱が肺野の30%未満の気胸患者では、REPEの発症率は0%であったのに対し肺胞虚脱が肺野の30%以上の患者ではREPEの発症率が17になったと報告している。 Chest. 1991 Dec;100(6):1562-6.
  • 肺胞虚脱期間に関しては、3日以上のものが83と大部分を占めることが知られている。 J Cardiothorac Vasc Anesth. 2007 Dec;21(6):887-91.
  • 再膨張の速度を意図的にゆっくりと行うことは REPE の予防法として知られている(が、どの程度の速度が最適解かはエビデンスが不足している)。 再膨張から1時間以内にREPE64%が発生し、2時間以内にREPE89%が発生する。残りの11%も24時間以内に発症するとされる(Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Aug;14(4):205-9. J Cardiothorac Vasc Anesth. 2007 Dec;21(6):887-91. )
  • 発症頻度は014%と、報告によってばらつきがある。 J Cardiothorac Vasc Anesth. 2007 Dec;21(6):887-91.
  • 気胸のドレナージ後のRPEの発生率は16と胸水ドレナージ後の0.08%に比べて高い。Eur Respir J. 2020 Nov 19;56(5):1902356.
  • 糖尿病患者、緊張性気胸患者でリスクは高まるJ Cardiothorac Surg. 2013 Jul 1;8:164.
  • 排液量 1,500 mL で著明に発症率が上昇するとの報告があるJ Cardiothorac Vasc Anesth. 2007 Dec;21(6):887-91.

 

以上を考慮すると、胸水穿刺前の評価で胸水が3日以上慢性に、胸腔容積の1/3以上で見られる場合にはリスクが高いといえ、そのような患者には、1時間以上、可能なら2時間程度かけて(ここがエビデンスが不足している部分だが、2時間以内に約9割のREPEが発症しているため、経過観察含めて)、1回1000ml程度、最大でも1500mlまでに抑えて胸水を抜くのが良いです。

 

 

なお、治療は対症療法が中心で酸素吸入が基本となります。

REPE 発生初期は酸素吸入単独で経過観察することが基本です。

・経時的に観察したところ、酸素吸入単独で12 時間後に酸素化が改善したとの報告もあり(J Med Case Rep. 2007 Sep 29;1:107.)、発生後12時間以後では挿管を保留する余地があり、12時間以内に急速に酸素化が悪化する場合には、挿管陽圧換気を考慮すべきといえそうです。治療が有効であった場発症から 3日で軽快します。

尚、補助治療としてステロイドやアルブミナーの投与は有用そうです(Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Aug;14(4):205-9.)が、利尿薬は予後が悪くなる可能性が示唆されており(Respir Med. 1996 Apr;90(4):235-8. 、適応は注意したほうが良さそうです。

予後は一般的には良好と考えられている。これはREPEが発生しても比較的軽症例が多く、約1週間以内に8189は治癒するとされているためです(Ann Thorac Surg. 1988 Mar;45(3):340-5.)。死亡率は文献やレビューでばらつきがあり、20%!という記載もありますが、そこまでは高くないのではというのが最近の理解です。

 

ちなみに、REPEによる肺水腫は非心原性肺水腫といい、心不全による肺水腫とは様相が異なるのは理解すべきでしょう。NEJMに良いレビューがあるので引用します。

鑑別の助けになるかもしれない胸部 X 線所見(N Engl J Med. 2005 Dec 29;353(26):2788-96.

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この中で出てくるWidth of the vascular pedicleとはなにか?

この論文(Chest. 2002 Mar;121(3):942-50.)が初出で、弓状動脈の左鎖骨下動脈起始部遠位側~右気管支部のSVC外側の距離となります。70mmがカットオフとなります。

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具体的には下のようにレントゲンで測定します、

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下がいちおうのフローチャートとなります(N Engl J Med. 2005 Dec 29;353(26):2788-96.)。流れとしては、

肺水腫覚知→「病歴・身体診察!(大事)、血液検査」→レントゲンまでである程度わかるよね、それでもわからんかったら超音波検査ですな、え、これでも微妙やったらもうカテーテル検査ですわ。です。レビューで言われずとも、いつものプラクティスとなっております。

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以上になります! 


2022年9月18日日曜日

意識障害/3×5表/NCSE

 意識障害の鑑別で非常に有名なのは、『AIUEO TIPS』だと思います。

病院によっては左のひょうの分類だけでも10秒以内に言えるように仕込まれることさえあります。
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・・・当然僕もおぼえたものの、個人的には網羅的であり、表として持参しながら確認するにはいいかもですが、診療の流れの中ではあまり役に立たないことも多いです。
そこで、僕が初期研修をした病院のボスが以下のような意識障害の鑑別方法を作成しました。これだと、流れに沿った診療ができて、漏れも少なくなるのでおすすめです。意識障害の3×5表といいます。
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あのひとで鑑別にあげていないものはないかと考えたとき、残るものとしては、尿毒症、髄膜炎、てんかん(NCSEを含む)、内分泌疾患(甲状腺機能異常)でしょうかね。
それらでもなければポルフィリン症など考慮ですが、まぁあまり考えないで良いでしょう。あと、意識障害のDO DONTは有名であり、ビタミンB1を測定したのなら、一度はチアミンを入れても良いと思います。

意識障害のワークアップとしてじゃあ検査は何すればいいの?です。
●意識障害の検査
必須採血:CBC  浸透圧 Chemo(腎機能、電解質、肝機能) アンモニア 血ガス 血糖
追加採血:ビタミンB1(Wernicke)・B6(痙攣のとき)、薬物血中濃度(使用している薬剤が痙攣や意識障害を起こしうるか常にチェック)、副腎・甲状腺機能、トライエージ、検体保存(後々で何かがわかるかも)
画像評価:頭部CT、頭部MRI
生理検査:心電図、髄液

あと、さっき言っていたNCSEですが。以前まとめたものをかいつまんで転載します。

NCSEは主に複雑部分発作あるいは単純部分発作が30分以上持続するか,回復なく30分以上反復する状態の事を言います。日本語でいうと非けいれん性てんかん重積です。
側頭葉病変のみならず前頭葉,頭頂葉,後頭葉の病変によっても生じうる。

近年は脳波異常+非痙攣性の臨床症状と定義されるみたいです。
古典的な臨床像として、複雑部分発作:凝視、反復性の瞬目・咀嚼・嚥下運動・自動症、複雑部分発作重積:意識混濁、意識変容が見られる。
複雑部分発作型のNCSEは昏睡状態を呈することが多いです。ICU領域で痙攣を伴わない昏睡例で8%がNCSEとの報告もあり、原因不明の昏睡では脳波を測定することが勧められます。

具体的にNCSEを想起する兆候としては、
●具体的にNSCEを想起する徴候
①眼球位腫・運動障害
 凝視
 眼球共同偏椅
 自発眼振様眼球運動
②自動症
 同じ言動の反復:瞬目,岨噸,礁下
 舌祇めずり
 鼻こすり
 パントマイム様顔而自動症
③急性意識障害
 昏睡状態
 意識変容
 意識レベルの変動
④遷延性意識障害
 遷延性植物状態
 意識レベルの変動
⑤過換気後遷延性無呼吸発作
⑥反復性意識消失発作
⑦高次脳機能障害
 失語
 クリュヴァー・ピューシー症候群
 健忘
⑧認知障害
 認知症
 異常言動
⑨精神症候
⑩急性心静止
⑪発作性・反復性・原因不明の神経症候
⑫発作間欠期における顔面や四肢の小さなミオクローヌス

NCSEの診断ってじゃあどうするの?ですが、
脳波異常!+抗痙攣薬の反応性+発作性に臨床症状が出現の3つがそろえば診断
といっていいようです。

治療は痙攣に準じますが、僕が覚えたものを記載しておきます。
●急性期症候の治療
NCSEによる重篤な急性症候(意識障害、無呼吸発作)
①セルシン5~10mg iv ⇒ 5~10分後にアレビアチン250mgを5分以上かけて投与
ホストインやフェノバルビタールも可
② ①に不応ならばICU管理下でドルミカム (0.2mg/kgをゆっくりiv ⇒ 0.1~0.5mg/kg/時を持続静脈投与)
*セルシンでは鎮静作用と呼吸抑制作用が前面に出るため、高齢者・呼吸不全では慎重投与

2022年9月17日土曜日

胸腔穿刺で肋間動脈を刺さないために。

今回は、改めて胸水穿刺を行う際の胸腔穿刺を考えるべきと思ったので、少しイベントからは時間が経ちましたが手技についてまとめてみました。

特に市中病院ではジュニアレジデントのときにもすることがある手技で、当たり前のようにできないといけないものです(プラスアルファとしては腰椎穿刺・腹腔穿刺)。

 

胸水を採取する理由の一つに疾患の鑑別があります。つまり、滲出性と漏出性の鑑別です。

以下があまりにも有名なLightの基準とその他補助診断になります。ちなみにLight先生は卒後4年目にこの基準を作られたそうです。すごいですね。

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[N Engl J Med. 2002 Jun 20;346(25):1971-7.]

Lightの基準は一つでも当てはまると滲出性胸水だと言われます。

 

胸水(特に片側性胸水)の鑑別に関しては機会があったら後日また送ります。尚、主に挙げられる鑑別は以下の通り。[Int J Clin Pract. 2009 Nov;63(11):1653-9.]

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今回は胸腔穿刺の方法論です。大体の施設がこのようにしているかと思います[日内会誌 102124312472013]

    1618Gの静脈留置針と注射器、三方活栓、点滴用延長チューブ(アスピレーションキットなどでも可)、消毒薬、局所麻酔に必要な23G注射針、注射器、局所麻酔薬などを準備する。

    胸水が貯留して穿刺しやすい体位(座位あるいは臥位)をとる。

    穿刺部(46肋間中腋窩線上を確認して穿刺予定部位周囲の十分な範囲を消毒する。

    23G注射針で穿刺部位に局所麻酔を十分浸潤させる。皮膚に対してほぼ垂直に注射器で陰圧をかけながら肋骨上縁で針を少し刺入する。血液の流入がなければ麻酔薬を適量注入する。同様の操作を繰り返しながら、穿刺部位の胸壁に麻酔薬を浸潤させながら針を進める。陰圧を加えながら臓側胸膜を越えると液体が吸引できる。癌性胸水などでは、胸壁内に癌細胞などを接種することになるので、液体が引けた時点で局所麻酔薬の注入を終える。

    局所麻酔後に胸壁表面から胸腔までの距離を確認する。静脈留置針と注射器を接続し、局所麻酔時と同じ穿刺経路で針を刺入する。注射筒に陰圧をかけながら、ゆっくりと肋骨上縁に沿って胸腔内に進める。壁側胸膜を破り胸腔内に達すると液体が吸引される。それ以上針が入らないように内筒を指で固定しながら外筒を進め、胸腔内に空気が流入しないように内筒と注射器を抜き、三方活栓などをつける。

    三方活栓に3050mlの注射器と点滴用延長チューブ・排液バッグなどをつないで目的の分量を排液する。(※当院でも他の施設でも、点滴用延長チューブの先に輸血用のルートを接続して、クレンメで流量を調整できるようにすることが多いです。)排液後はすみやかに外筒を抜去し、ガーゼと伸縮テープで穿刺部を圧迫する。

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重要なのは穿刺部位です。46肋間中腋窩線上を選択するにはなにか理由があるのでしょうか?


2003年に発表されたBritish Thoracic Society ガイドラインで「safe triangle」といわれる広背筋前縁、大胸筋外側縁、乳頭の水平面より上方および腋窩より下方で囲まれた部位が穿刺に適した部位とされていて、その場所が結果的に第46肋間となるようです[Thorax. 2003 May;58 Suppl 2(Suppl 2):ii53-9.]。尚、気胸の場合は第2肋間鎖骨中線や第45肋間中腋窩線または前腋窩線とやや適する位置が異なることに注意です。

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ただこれでは不十分で、長胸神経や肋間神経外側皮質枝へのリスクを最小限に抑える目的に、腋窩中線より1cm前方を穿刺するほうが良いという意見もあります[Crit Care. 2013; 17(Suppl 2): P293.]


とはいえ、第4~6肋間はやや高く、エコーで見ると胸水が溜まっていないことも多く、「やむをえず」それ以外の肋間からアプローチせざるをえない場合があるのが現実です。

 

医療事故調査・支援センター胸腔穿刺に係る死亡事例の分析(https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=60)に記載されている図ですと、解剖学的には以下のような配置となります。場合によっては心臓や大血管にも当たりうる、ということを忘れないことが大事です。

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ところで肋間動脈は肋骨下縁にある溝を通ると習いますが、分岐したあとしばらくは肋間を走行するという事実を知っているでしょうか?

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面白い研究があって、その中では肋間動脈は棘突起より外側の肋間7cm以内で肋間に露出していることが示唆されています。Chest. 2013 Mar;143(3):634-639.

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また同じ文献中に下部肋間と血管位置の分布も記載されており、大体50cm!は肋間を走行する可能性があるとのことでした。50cmなんてほぼほぼ、前胸部ですよね。

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以上から言えることは以下の3点です。

・通常はSafety triangleを目印に刺す。

・中腋窩線から1cm程度前方を狙う。

safety triangle以外をやむを得ず狙う場合には、棘突起から外側7cm以上の部位を狙う。下部肋間をアプローチする際には常に血管損傷のリスクがつきまとうことを前提に動く。

 

以上です!

2022年9月16日金曜日

入院患者で発熱を見たら/偽痛風を見たら・・・

先日僕が外勤に行っている間にチームの患者が38度を超える熱発をきたしました。

知っている方はすでに知っていると思いますが、入院患者の発熱で考えるべき事をおさらいしましょう。

 

まずはいつのタイミングでもFever work upをしなければならない状況です。

    敗血症(38度以上の発熱に、頻脈、頻呼吸、意識障害、低血圧を伴う場合)

    悪寒戦慄を伴う場合(特異度90.3(89.2-91.5)%, 陽性尤度比4.65(2.95-6.86)で菌血症を示唆する[Am J Med. 2005 Dec;118(12):1417]

    血管内デバイス感染、尿路感染、胆道感染が疑われる場合

悪寒戦慄の問診ですが、「毛布に包まってもガタガタ震えますか?」と聞くと良いでしょう。

 

胸部レントゲン、尿検査、一般採血に加えて培養を取るのがFever workupmininum workupと言います。なお培養=血液培養2セット+尿培養+痰培養です。

 

では何を念頭に診察していくかですが、僕は以下のように考えるよう教えてもらいました。



最低限考えておくべき3疾患

    肺炎

    尿路感染症

    胆道感染症(胆嚢炎・胆管炎)

医原性疾患の3疾患(医原性3D

    Drug:薬剤

    Device:血管内ライン、期間内チューブ、経鼻胃管、尿道カテーテル、透析用シャント、その他人工物

    Difficile:クロストリジウム・ディフィシル=偽膜性腸炎

寝たきり患者の3疾患(寝たきりの3D

    DVT;深部静脈血栓症

    Decubitus:褥瘡感染

    CPPD:結晶性関節炎≒偽痛風

その他、軟部組織感染症や腹腔内感染症もありえますが、History & Physical(Top to toe approach)を丁寧に取ることで、程度絞り込むことができます。

 

それらを踏まえて今回の事例を考えましょう。

肺がんを既往に有し、放射線治療後の70代の男性。今回膜性腎症によるネフローゼ症候群の治療目的に入院となっています。急性発症の38度を超える発熱を認めており、右肩関節に自発痛ならびに圧痛を認めたが、その他症状、身体所見は認めなかった。

整形外科にコンサルトを行うと、右肩関節の関節裂隙に石灰化を認めており、穿刺液は黄色混濁であったため、偽痛風疑いと診断された。

*******

 

さて、偽痛風(CPPD disease)って何でしょうか?

CPPDcalcium pyrophosphate depositionの略で、6-24 時間以内に最大となる激しい関節痛、腫脹、圧痛が急速に出現するのが特徴です。原因は名の通り、ピロリン酸カルシウムの関節内沈着です。65 歳以上の患者で、膝、手首、肩に結晶性関節炎を示唆する症状があれば、偽痛風である可能性が高いものの、結局は結晶の証明が確定診断となります。Ann Rheum Dis. 2011 Apr;70(4):563-70.

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場所としては、膝がもっとも起こりやすいですが、肩や手関節、MCP 関節でも起こるのが特徴です。

 

CPPDを起こしやすい病態として、①年齢。②変形性関節症の存在、③外傷の既往、④副甲状腺機能亢進症、⑤低マグネシウム血症、⑥利尿剤(ループ利尿薬)などが挙げられます。Ann Rheum Dis. 2011 Apr;70(4):563-70. Rheumatology 2012;51:2070-2074. 

この患者では、ループ利尿薬を胸水軽減のために発症5日前から使用していたので、年齢も併せて原因となった可能性がありそうです。

 

画像的検索にはレントゲンとエコーが有用です。

レントゲン初期スクリーニングの場所として、膝、骨盤(恥骨結合)、手関節 Xpを撮影する必要が本来はあります。McCartyでは、この 3 か所で CPP crystal がなければそれ以上調べる必要はないとされています。

CPPD disease の レントゲンでは軟骨石灰化が特徴ですが、その実は40%でしか見られないとされています。N Engl J Med. 2016 Jun 30;374(26):2575-84.

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エコーでは以下のような所見が特徴的とされています。

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ネジメントで大事な点は以下の通りです。Ann Rheum Dis. 2011 Apr;70(4):571-5.

l  冷却や関節穿刺などの非薬物治療や、長時間作用型のステロイド関節注射(eg. リンデロンなど)などの非内服治療のみでも症状は良くなることがある。

l  NSAIDs(潰瘍が無ければ)とコルヒチン(0.5mg×3/日を数日間)は同じくらい効果がある。

l  関節穿刺が受け入れられない患者に対しては、短期間のステロイド(内服or静脈注射)使用は許容される。

l  発作予防としては少量コルヒチン(0.5mg-1mg/日)か少量NSAIDs.

l  CPPDの長期マネジメントとしてNSAIDsやコルヒチンが使えなければ、少量ステロイドやMTXヒドロキシクロロキンなどは考慮される

l  副甲状腺機能亢進やヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症は、是正する。

l  症状が無いいCPPDについては、無治療で構わない。

 

症例に戻ると、この整形外科の先生が結晶の証明をしてくれなかった事で、管理が難しくなりました。「偽痛風を疑ったら、化膿性関節炎を除外する」が本日最も伝えたい事です。化膿性関節炎の証明は培養でしかできません(とはいいつつも、70-90%で同定できるのみで完璧ではない)[Lancet 351:197-202, 1998]、また、CPPD関節炎と併発することも稀にあります(1.5%)[ J Emerg Med. 2007 Jan;32(1):23-6.]

そこで、関節液を評価することで診断確率を上げることができます。以下に診断特性を示します。「白血球がゴマン(5/mcL)いたら、化膿性関節炎!」とおぼえましょう[JAMA. 2007 Apr 4;297(13):1478-88.]これも特異度が100%じゃないことに注意です。

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グラム染色もしたほうが良いですが、診断特性が低い事に注意です(化膿性関節炎におけるグラム染色の感度GPC:5075% GNR:50%未満)つまり陰性だからといって化膿性関節炎を除外してはならない[Lancet 351:197-202, 1998]。

 

長くなってしまいましたが、本日伝えたいこととしては以下の3です!

l  院内発症の発熱を見たら、コモンな3疾患と6Dはせめて押さえる

l  CPPDを疑ったら、化膿性関節炎を除外する!

l  白血球がゴマン(5/mcL)といたら、化膿性関節炎!

 

以上です!

2022年9月14日水曜日

担癌患者のCRP上昇。感染?プロカルシトニンはどれだけ有用?

 今、発熱はないものの担癌患者(非小細胞肺癌)でCRPが微増している患者がいます。入院中にESBLクレブシエラ肺炎の治療歴があり、5日間治療をおこなったのですが下がらないこと、少し前に胸水を採取したところ癌細胞の胸膜播種があったことから腫瘍に随伴した炎症反応の上昇ではないかと考えています。ただ本当に、それでいいの?他の指標、具体的には「プロカルシトニン」は使えないか、というのが今回のクリニカルクエスチョンです。

プロカルシトニンとCRPの違いは、以下のようなものです。

■プロカルシトニンとCRPの特徴(検査と技術. 2010; 38(10): 916-920.

 

プロカルシトニン

CRP

上昇時期

3時間

6時間

ピーク

12時間後

24時間以後

半減期

24時間

20時間

産生臓器

全身(肝、肺、腎、脂肪etc…

肝臓

産生刺激

TNF-α、IL-6など

 

PCTは感染による炎症所見を反映するもの」と言われるものの、偽陽性となる病態は非常に多いです。また逆に、感染症にも関わらず、偽陰性となることもあるので、そこのところ注意です。

PCTの偽陽性・偽陰性の要因、及びPCT合成を阻害しないもの(medicina. 2019; 56(12): 1948-52. )

偽陽性

偽陰性

 

非細菌感染症

l  マラリア

l  全身性の真菌感染(カンジダ、アスペルギルス)

l  レジオネラ

l  重症クロストリジウム腸炎

l  感染の早期

l  感染性心内膜炎

l  虫垂炎

l  局所に限局した細菌感染症(膿胸、扁桃周囲膿瘍、化膿性関節炎、皮膚軟部組織感染症)

 

身体的負荷

l  ショック、心肺停止蘇生後

l  外傷、術後

l  熱中症、熱傷

l  腸管虚血、膵炎

l  脳出血

l  化学性肺臓炎

l  サイトカイン血症(FMFなど)

l  移植後拒絶反応

l  急性呼吸窮迫症候群

PCT合成を阻害しないもの

l  ステロイド投与

l  好中球減少症

l  HIV感染症

悪性腫瘍

l  甲状腺髄様がん

l  小細胞肺がん

l  カルチノイド

l  腫瘍随伴症候群

薬剤投与

l  抗胸腺細胞グロブリン

l  T細胞抗体

l  顆粒球輸血

l  リツキシマブ

l  アレツズマブ

l  悪性腫瘍に対するTNF-α

自己免疫疾患

l  川崎病

患者背景

l  新生児

l  腎障害(CCr 30mL/min未満)

 

ちなみにCRPも感染症であがるでしょ?という短絡的な思考ともなりやすいですが、以下の病態に注意です。

CRPが上がりづらい疾患や背景因子(medicina. 2021; 58(5): 590-93.)

疾患

背景因子

l  髄膜炎や脳炎などの中枢神経感染症

l  漿膜炎を伴わないSLE

l  猫ひっかき病などのリンパ節感染

l  免疫芽球性T細胞性リンパ腫

l  甲状腺機能亢進症など内分泌疾患

l  習慣性高体温症

l  心因性発熱

l  薬剤熱

l  肝硬変患者

l  免疫抑制薬使用患者

l  頭蓋内圧亢進状態(脳出血、頭蓋内感染)

l  高温環境

 

これら炎症マーカーは細菌感染症にどれだけ有用なのでしょうか。それをまとめたメタ解析論文があります。

 

CRP、プロカルシトニンの細菌感染に対する感度と特異度(Clin Infect Dis. 2004 Jul 15;39(2):206-17.)

 

細菌感染症

プロカルシトニン

CRP

感度%(95%CI)

特異度%(95%CI)

感度%(95%CI)

特異度%(95%CI)

vs 非感染症

88(80-93)

81(67-90)

75(62-84)

67(56-77)

vs ウイルス

92(86-95)

73(42-91)

86(65-95)

70(19-96)

このメタ解析では組み込んだ研究それぞれの CRPのカットオフ値が1.510mg/dL、プロカルシトニンのカットオフ値が0.5-6.1ng/mLとばらつきがあることに注意が必要であるもののやはりこれらの値だけで 細菌感染症の診断はしないほうがよいと言える。

 

そもそも、疾患によってプロカルシトニンの有用性(診断特性)が異なることも知られている(BMC Med. 2017 Jan 24;15(1):15.)。以下は診断に有用な疾患を+の数で表したもので、感染性心内膜炎や虫垂炎、化膿性関節炎におけるプロカルシトニン値は解釈が必要となってくる。



肺炎の場合には以下のようなことが少なくとも言えそうだ。





じゃあ、今回の症例に戻るとどうか。

担がん患者の発熱において血流感染患者ではプロカルシトニンが高値となり、血流感染や限局感染であれば適切な抗菌薬の使用でプロカルシトニンが減少を示す一方で、腫瘍熱の場合は減少を示さないということが感染と腫瘍熱の鑑別点になるかもしれない、とまぁ当たり前なことが言われています。Cancer. 2012 Dec 1;118(23):5823-9.



まとめると、治療前後で一度、PCTを測定してみても良かったのかもしれないですね。

 

以上です。


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