2017年6月6日火曜日

α1アンチトリプシンクリアランス試験

京都GIMでのディスカッションにもなっていた蛋白漏出性胃腸症について.強皮症の患者で下痢が続くという人に対して前医が行っており解釈が必要になったため勉強.

・蛋白漏出性胃腸症は,血漿蛋白,特に分子量の小さいアルブミンやIgGが消化管腔へ異常に漏出し,低蛋白血症,浮腫などを惹起する症候群.
・消化管腔への蛋白漏出を証明するには α1-アンチトリプシン(α1-AT)の血中から便中への移行を計算する α1-AT クリアランス試験が有用.
・α1-AT は分子量約5万(ほぼアルブミンと同じ)の糖蛋白で,主として肝臓で産生される protease inhibitor.
・通常は消化管に分泌されず,消化管腔へ漏出しても消化酵素や細菌の影響を受けず抗原性をもったまま糞便に排出されるため,そのクリアランスが蛋白漏出の証明となる.

α1-ATの測定手順 臨床検査. 2013;57(11):1218-19.
・1 日単位で蓄便を行い,その間に採血も行う.
・蓄便は紙おむつや新聞紙など便を吸収してしまうものは不可.
・α1-AT は常温では失活するため検体は-20℃で保存.
・pH が3以下で急速に分解されるため,Ménétrier 病など胃からの漏出が疑われる場合にはH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬による胃酸分泌抑制下で行う.

解釈について
・α1-AT クリアランスの正常値は 13 mL/日以下
・20mL/日以上で確実な蛋白漏出と判定する.
・1 回便を用いた糞便中α1-AT 濃度検査の有用性も報告され,33〜54 mg/dL が正常.
・消化管出血があると便中α1-AT濃度は上昇するため注意が必要.
・51Crを用いた蛋白漏出の評価と比較して,α1-ATクリアランス試験の感度は93.3%,特異度は90%.Gastroenterology. 1981;81(4):777. 

・蛋白漏出をきたす疾患は,その機序により腸リンパ系,粘膜上皮,血管透過性の 3 つの異常に大きく分類されるがオーバーラップもある.
・機序により漏出程度も異なり,腸リンパ系異常では 150 mL/日以上になることがあるが,膠原病など血管透過性亢進では 50 mL/日を超えない.
・炎症性腸疾患では疾患活動性と蛋白漏出の相関が報告されている.

原因部位の同定
・α1-ATクリアランス試験は蛋白漏出の直接的定量法だが,漏出部位は同定できない.
・99mTcDTPA結合HSAシンチグラフィーは比較的簡便で,蛋白漏出の有無とともに漏出部位も同定できる.
・シンチの欠点は定量法でないこと,被曝の問題,上部小腸の蛋白漏出と下部小腸の再吸収の影響を受けること.


診断手順 臨床検査. 2013;57(11):1218-19.

α1-ATで蛋白漏出が証明された場合,以下の検査を行う.
上部および下部消化管内視鏡検査
・Crohn病や潰瘍性大腸炎、消化管腫瘍、Ménétrier病、Cronkhite-Canada症候群など
・消化管病変からの生検病理組織検査は確定診断に有用である。
消化管粘膜生検
腸リンパ管拡張症やアミロイドーシスの診断には消化管粘膜生検が有用。
血液検査
・好酸球数・IgEの検査:アレルギー性胃腸症や好酸球性胃腸症など
・自己抗体:膠原病
造影CT検査
・造影CT検査による胸水、腹水、腸管壁肥厚、リンパ節腫脹、血管閉塞の有無の評価

治療
・栄養障害に対する栄養治療+原因疾患の治療
・低脂肪食.低脂肪食で栄養維持が困難な場合は、不足するカロリー量および栄養素を補うために経腸栄養剤.

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