2017年7月21日金曜日

腸腰筋の病変

腸腰筋に病変を来す原因 Emerg Radiol. 2008 Sep;15(5):295-310.


腸腰筋膿瘍の合併症 Emerg Radiol. 2008 Sep;15(5):295-310.
  • 尿路閉塞
  • 骨髄炎(仙腸関節,股関節,椎間板)
  • 瘻孔形成
  • ドレナージチューブ抜去後の膿瘍再発
  • 以上合併症に対する放射線的介入・外科的介入


腸腰筋周囲の解剖 Emerg Radiol. 2008 Sep;15(5):295-310.

CTでの所見の診断精度 AJR Am J Roentgenol. 1994 Jan;162(1):83-6.
いずれの所見も,腸腰筋血腫と判断するには微妙だが,
びまん性病変が血腫で特徴的といわれている.その他腫瘍,膿瘍,血腫については図の通り.

2017年7月18日火曜日

上肢DVTについて

概論
  • UEDVTは全てのDVTのうち4−10%の症例でみられ,10万人に3.6人に発症すると言われている.Thromb Res. 2017 Jun 1;156:54-59.
  • UEDVTはしばしば腋窩静脈や鎖骨下静脈に発生するが,橈骨静脈や尺骨静脈,上腕静脈といった遠位の静脈にも発症するし,同様に腕頭静脈や内頸静脈といった頸部の深部静脈にも生じる.Thromb Res. 2017 Jun 1;156:54-59.

原発性UEDVT Thromb Res. 2017 Jun 1;156:54-59.
  • 前UEDVTの約20−50%であり,そこには真に特発性の症例や,Paget-Shroetter症候群が含まれる.
  • Paget-Shroetter症候群はeffort-related rhtombosisとも言われており,反復した腕の動きや激しい腕の動きにより鎖骨下静脈を圧迫することによって生じる.
  • 胸郭出口症候群は潜在的に,Paget-Shroetter症候群の病因に一役買っている.

続発性UEDVT Thromb Res. 2017 Jun 1;156:54-59.
  • 一過性の,もしくは永続的なリスクファクターによってひきおこされる.
  • 弱いリスク因子として,静脈血栓塞栓症の家族歴がある事,不動,経口避妊薬使用,血小板増多症,ペースメーカがある.
  • 強いリスク因子として,CVカテーテル挿入中,担癌患者,上肢の手術歴がある.
  • 70%以上のUEDVTの原因がCVC関連.


臨床予測スコア 

各種検査特性
  • D-dimerのカットオフ:500 μg/L
    • 50歳以上のカットオフ:patients age in years × 10 μg/L


2017年7月14日金曜日

Non thyroidal illnessについて

PSL内服中,橋本病の既往がある高齢女性でフォロー目的にTSH, FT3/FT4を測定したところTSH低値,FT3低値を認めた.
汎下垂体機能低下症のスクリーニング目的に各種下垂体前葉ホルモンを出したが,ひっかからず(ACTH・Cortisolは外部からPSL入っているため低値でした).
なんぞ?

nonthyroidal illness(NTI) medicina.2005;42(7):1238-1240.
甲状腺以外の疾患で血中甲状腺機能検査値に異常をきたす病態.
病因:
  1. 5′-脱ヨード反応の低下
  2. 甲状腺ホルモン結合蛋白の低下
  3. TRH,TSHの分泌低下
  4. 甲状腺ホルモンの細胞膜輸送体の機能低下
  5. サイトカインの影響

原因:medicina.2005;42(7):1238-1240.

NTIと甲状腺疾患の鑑別 medicina.2005;42(7):1238-1240.
治療:
  • NTIにおけるT4値は生命予後とも相関し,4μg/dl以下での死亡率は50%,さらに2μg/dl 以下では死亡率は 80%に達するといわれている.
  • 原疾患が治癒すれば,血中甲状腺ホルモン検査の異常所見は速やかに改善
  • NTI に対する甲状腺ホルモン剤投与は原疾患の予後には影響しないとする報告が多い.
  • 従来の治療法のみでは予後の改善が期待できない重症の心筋梗塞に伴うNTIに対してはT3投与が有効であるとの報告がある.
またPSL30mg/day以上服用しているとTSHの分泌が抑制されるとのことです.INTENSIVIST. 2015;7(3);604-613.

勉強になりました.

2017年7月13日木曜日

サイトメガロウイルス感染・サイトメガロウイルス腸炎

サイトメガロウイルス Gastroenterol Endosc 2010;52:221-30.
  • CMVはヘルペス科のDNAウイルスで,ヒト以外には感染せず,ヒトからヒトへの伝播には密接な接触を必要とする.
  • CMVの感染様式は母子間,性的,医原的に分けられる.
  • 母子間では子 供の時期に胎盤,産道,母乳などから感染する. 性的感染は大人になってからの初感染が多く,精液,子宮頚管・膣分泌液などから感染する.医原的は移植,輸血などにより感染するが,本邦では多くが産道感染により初感染を受け,終生持続感染する.
  • 多くは不顕性感染で成人の抗体保有率は 60~90%
  • 一度感染するとウイルスは生体内に生涯にわたって潜伏する
  • 潜伏したウイルスは宿主の免疫力の低下により再活性化する.
  • 思春期以降に初感染を受けた場合は伝染性単核球症様の症状を呈することが多くCMV 単核症と呼ばれる.この場合にもCMV腸炎を合併することがある.


サイトメガロウイルスのハイリスク患者、主要徴候、部位 Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.


  • 部位については67%が下部消化管とされる Curr Gastroenterol Rep (2012) 14:334–342
  • エイズ患者の場合、CMV疾患はCD4リンパ球が100/mm3以下の場合に増加する. Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.
  • リスクとなるステロイドの量に関しては、調べた限りでは不明.
診断algorithm
・エルゼビアに良いアルゴリズムがあったので、参照。
 
以下、up to dateの翻訳
・サイトメガロウイルス腸炎では、血漿や全血PCRでCMVが陰性であったとしても除外することが出来ない。
・PCRのCMV腸疾患に対する感度は85%、特異度は95%である。
・CMV腸疾患患者の平均血漿CMVコピー数は38334 copies/ml。
・ただしCMV腸疾患と生検で診断した患者のうち15%は血漿からCMV-DNAを検出することができない。

・便検体からCMVを培養することはCMV腸炎の診断においては無意味。 

ただし2010年の系統的なレビューではPCRは感度91%としている。
・言わずもがな、組織診断は特異度100%。Turk J Gastroenterol. 2010 Mar;21(1):83-6.

推奨されうる検査は次の順となる.Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.
  • CMV感染のウイルス学的診断は,血液ではPCRによる血中 DNA の証明,血液中の白血球中抗原(アンチゲネミア)の証明,抗体検査ではIgM抗体あるいはペア血清でのIgG 抗体の有意な上昇.
  • 最も用いられるのはアンチゲネミア法で,1個/5万細胞以上を陽性と判定するが,陰性であるからといって CMV感染は否定できない.
治療 Curr Gastroenterol Rep (2012) 14:334–342
・膠原病患者、炎症性腸疾患患者(IBD)、癌患者、薬剤による免疫機能低下患者、明らかに基礎疾患のない患者におけるCMV腸炎の治療は、決まった見解はない。
・ステロイド、免疫抑制薬使用患者は減量、中止を考慮し、他の患者は、症状やCMV血症を考慮して治療すべきかを決定することが推奨される。

免疫抑制患者でのサイトメガロウイルス感染症の発症リスク。
糸球体疾患を有する患者に対して免疫抑制を行った133名のretrospective cohort study. Int Urol Nephrol. 2014 Dec;46(12):2357-60.
・発熱・倦怠感・筋痛・咳嗽・喀痰・下痢・白血球減少・肝酵素異常・肺炎を免疫抑制中に発症した患者に対してCMV DNA PCRが行われた。
・1000copies/μL以上を陽性とされている。 
・シクロホスファミド+ステロイドはCMV感染症の発症リスクとなる。
・有意差は出ていないが、MMFではCMV感染症を発症することはなかった。
・その他、多変量解析でクレアチニンおよび年齢がCMV感染症を発症させるリスクと判明している。
・CMV感染症は免疫抑制剤開始後5ヶ月の間にみられると言われている。

サイトメガロウイルス腸炎 
潰瘍形成機序には2つの説がある.Gastroenterol Endosc 2010;52:221-30.
  1. 血管内皮細胞でCMVが活性化増殖し,炎症細胞と血管内皮の巨細胞化により血管内腔が狭小化し,粘膜に虚血性変化が生じるという説
  2. 既存の潰瘍にCMVが二次的に感染する
  • 1の機序が主と考えられている.
  • 潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎に合併する CMV腸炎は2の機序の可能性が考えられる.
  • 潰瘍性大腸炎に関してはCMV感染が重症・難治化に関与していることが知られている.

  • 病変部位は多くは区域性であるが,全大腸の場合もある.
  • 区域性の場合,右側に多いとする報告と左側に多いとする報告がみられる. 
  • 小腸での好発部位は終末回腸であり,内視鏡検査の際には終末回腸の観察が必要である.

  • 内視鏡像の特徴は多彩な潰瘍が多発することであり,潰瘍は形や大きさや深さも様々とされている.
  • 発赤,びらん,アフタ様潰瘍,不整形潰瘍,円形潰瘍,地図状潰瘍,打ち抜き様潰瘍,帯状潰瘍,巨大潰瘍,縦走潰瘍,横走潰瘍,粘膜脱落,偽膜様病変などが報告されている.

  • CMV腸炎を疑った場合,組織の核封入体,酵素抗体法によるCMV抗原の検出,血中アンチゲネミアの測定を行う.
  • 病変部組織検査では,HE染色による核封入体の証明,酵素抗体によるCMV抗原の証明,PCRまたはin situ hybridizationによる組織中のDNAの証明など.核封入体の検出は細胞に感染しているCMVの証明となり,感染症と診断できる.潰瘍底からの生検での陽性率が高い.


2017年7月11日火曜日

肺炎球菌迅速検査

概論
  • グラム染色は,安価で迅速にできる検査で,形態と染色性から菌の推定が可能・炎症細胞の出現や貧食像の確認も可能であるという長所の一方で,場所や設備(顕微鏡)が必要で,実施者の検体処理の技量や熟練した判定能力などに検査結果の判定が左右される.
  • グラム染色の感度は43~100%,特異度は11~94%のばらつきがある.日本呼吸器学会誌 2(4):343-348, 2013.
  • 自己融解酵素を有する為に培養困難な場合がある.Chest.1998;114:1588-1593.
  • 受診前に他の医療機関で抗菌薬の投与がされていても,尿中抗原の陽性率に有意差はなく,尿中抗原検査はすでに抗菌薬が投与されている 患者にも有用.北臨技会誌.2017;15(1):2-6.
  • 喀痰のGeckler分類と尿中抗原の陽性率に有意差はない.北臨技会誌.2017;15(1):2-6.
  • 発症3日以内に検査をした場合と4日以上経過した場合で比較をしたところ,発症3日以内に検査をしたほうが尿中抗原の感度が良い.北臨技会誌.2017;15(1):2-6.
  • 以前より喀痰グラム染色・喀痰培養検査・尿中抗原検出キット(BinaxNow)があった.近年,喀痰を検体に用いる肺炎球菌抗原検出キットであるラピランが登場している.日本呼吸器学会誌 2(4): 343-348, 2013.

各種検査陽性率
検査特性 日本呼吸器学会誌.2013;2(4):343-348.
迅速抗原検査の日数に拠る感度の変化 日本呼吸器学会誌.2013;2(4):343-348.
Binaxの添付文書上には,尿中の肺炎球菌英膜抗原は症例によって異なるが,尿中に排出されるのは通常症状出現後3日目以降であり,発症後間もない検体では検出できない恐れがある」とある. 一方で2013年の研究では,
と,BinaxNowの場合には,0日で感度最大,以後減少した.
ちなみにRapirumの場合,0日と2日目で感度が最大になる.
特異度はほぼ変わらず. 

尿中肺炎球菌抗原の陽性期間
  • 7.3週という報告や、1週から3.4週という報告もある.Scand J Infect Dis. 2006;38:166-171. 日本呼吸器学会雑誌. 2003;41:521-525.

交差反応の問題 Infect Immun.1993; 61:3076-3077.
  • 莢膜多糖体抗原はすべての S. pneumoniae の serotype に共通であるだけではない
  • 他のStreptococcus 属 Milleri グループ(S. mitisやS.oralis)でも共通である.

2017年7月7日金曜日

ステロイド性骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症の発症機序
ステロイドの骨組織への直接的な影響 
  • ステロイドの骨形成への影響
  1. 骨芽細胞の増殖と分化の抑制 → 骨芽細胞数の減少
  2.  骨芽細胞のアポトーシス誘導 → 骨芽細胞の寿命短縮
  3.  骨芽細胞による骨基質合成の低下
  • ステロイドの骨吸収への影響 

  1.  破骨細胞分化抑制因子 OPG 産生抑制、破骨細胞分化誘導因子 RANKL 産生亢進 → 破骨細胞の分化・活性化を促進(一部 controversial)
  2. 破骨細胞のアポトーシス抑制 → 破骨細胞の寿命延長
  3. 骨表面での破骨細胞数増加
ステロイド性骨粗鬆症の特徴
  • 骨密度はステロイド開始後短期間で減少し、骨脆弱性が生じる
  •  高い骨密度でも骨折を起こしやすい(ステロイド性骨粗鬆症におけるYAM の 80%の骨密度の患者の骨強度は、原発性骨粗鬆症におけるYAM の 70%の骨密度を示した時の骨強度に相当)J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 既存の骨折がある患者では、新規骨折リスクのオッズ比が 5.2 ~7.9 倍と非常に高い J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 2.5mg/日未満の少量ステロイドでも脊椎椎体骨折のリスク増加あり(1.55 倍)J Bone Miner Res 15 : 993-1000, 2000.
  • 2.5mg/日以上使用例では投与開始後わずか 3 ~ 6ヶ月で骨折リスクが最大に達する Osteoporosis Int 13 : 777-787, 2003
  • 20mg/日を超えると骨折リスクは急激に増大 J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 骨折を回避するための安全なプレドニゾロン1日投与量を算定すると71μg /日であったと報告されおり、安全な治療用量はないと考えざるを得ない  J Intern Med, 254:486-493, 2003.
  • 投与中止後骨折リスクは低下していくが、中止後 2 年では非投与例と同じレベルまでは低下しない J Bone Miner Res 15 : 993-1000, 2000.
  • 日本人膠原病患者を対象にした前向き研究の結果が報告され,骨吸収亢進はステロイド開始後1週間から発生し,ステロイド開始後早期からのアレンドロネートとアルファカルシドールの併用療法の有用性が示された.J Bone Miner Metab. 2016 Nov;34(6):646-654.

ステロイド投与に拠る骨折の発生率と,用量毎の骨折リスクJ Bone Miner Res. 2000 Jun;15(6):993-1000.

ステロイド開始後,骨折発症リスクは増大 Osteoporos Int. 2002 Oct;13(10):777-87.

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のアルゴリズム(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015)
・ステロイド開始後の骨量減少は最初の数カ月が 最も高いため,早期からの薬物療法が望まれる。
・アレンドロネートとリセドロネートは,ステロイド性骨粗鬆症の骨密度に対する有意な一次予防効果および 二次予防効果が示され ,椎体骨折の有意な抑制効果も報告されており,第一選択薬である.
・第一選択薬が禁忌,早期不耐容,効果不十分 などの場合に使用.
・活性型ビタミンD製剤のアルファカルシドールとカルシトリオールは,ステロイド骨粗鬆症において単一試験での効果は明らかではない.
・消化器症状やコンプライアンス不良で経 口薬の投与が困難な場合は,アレンドロネートの点滴静注製剤や静注剤であるイバンドロネートを考慮.
・既存骨折があり,高用量のステロイドを服用している閉経前女性に限って,アレンドロネート,リセドロ ネート,テリパラチドを推奨.ArthritisCare Res (Hoboken).2010;62:1515-1526.

経過観察ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療. ガイドライン:2014 年改訂版.
・胸腰椎単純レントゲン撮影,骨密度測定を半年から1年毎に行う.
・GC投与量の変化を考慮し,定期的に骨折リスクをスコアで評価.

ステロイド性骨粗鬆症薬物療法の推奨 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療. ガイドライン:2014 年改訂版.
ビスフォスフォネート製剤
アレンドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした試験で、プラセボ群と比して腰椎骨密度は 1 年で 3.3%増加し、新規椎体骨折の頻度を1 年で 41.5%減少させ、2 年で 89.7%減少させた。Arthritis Rheum. 44 : 202-211, 2001. Arthritis Rheum 52, S570, 2005.
リセドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした試験で、腰椎骨密度は 2.5 ~ 3.7%増加し、新規椎体骨折の頻度を 62 ~68%減少させた。J Bone Miner Res. 15 : 1006-1013, 2000.
エチドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした 1 年間の試験で、プラセボ群と比して腰椎骨密度は 3.8%増加し、新規椎体骨折の相対危険率は 43%低下した。N Engl J Med. 7, 337 : 382-387, 1997. J Rheumatol. 31 : 163-166, 2004.

活性型ビタミンD3 製剤 
  • RCT のメタ解析で、無治療やカルシウム製剤あるいはその他のビタミン製剤に比べて腰椎骨密度の維持・増加や腰椎骨折率においてビスフォスフォネート製剤には劣るが有効であることが報告された。Osteoporosis Int 15, 589-602, 2004.

ビタミンK2 製剤 
  • 本邦における縦断研究で、骨折予防効果が報告された。Osteoporosis Jpn11 : 11-14, 2003.

ステロイド性糖尿病

概論

  • ステロイド治療後の糖尿病発症は1年未満がほとんど
  • 頻度は5~25%
  • ステロイド糖尿病ではインスリン抵抗性が主病態のため,食後高血糖,食後高インスリン血症.
  • 特徴は食後の高血糖.早朝空腹時血糖値は低い傾向.
  • プレドニゾロンのT1/2は2.5時間だが組織での作用持続時間は12時間以上
  • 朝1回のプレドニゾロン内服により昼食後〜夕食後の血糖値が上昇
  • 35歳以上でヒドロコルチゾンを使用する場合,糖尿病発症リスクは 40mg/日未満で2倍,40~79mg/日で 3倍,80~119 mg/日で 6 倍,120 mg/日以 上で10倍.Arch Intern Med.1994;154:97-101.
  • 単純換算するとプレドニンでは10mg/日未満で2倍,10~19mg/日で3倍,20~29 mg/日で6倍,30mg/日以上で10倍.
機序
  1. 肝臓での糖新生の亢進
  2. 骨格筋,脂肪組織における糖の取り込みの抑制
  3. 脂肪組織において脂肪分解を促進し血中 遊離脂肪酸を増加させる
  4. 膵臓におけるグル カゴン分泌の増加,インスリン分泌の低下

モニタリング項目
  • 昼食後〜夕食後の血糖値測定
  • 短期間の食後高血糖を反映しやすい1,5AGやグリコアルブミンを用いる
  • 糖尿病の発症はステロイドの使用量に比例
  • ステロイドパルス療法,重症炎症,高カロリー輸液時は厳重な血糖管理を行う.
非インスリン治療薬によるステロイド糖尿病の管理
・ステロイド糖尿病ではインスリン抵抗性が主病態のため,食後高血糖,食後高インスリン血症となる.
・糖尿病治療薬として食後高血糖改善系またはインスリン抵抗性改善薬系が適している.
・インスリン抵抗性改善作用を有するチアゾリジン誘導体やビグアナイド薬,もしくはαグルコシダーゼ阻害薬を第一選択とするのが病態生理にかなう.


参考文献)
medicina.2014;51(8):1466-1470.
medicina.2008;45(9):1653-1657. 

出血性膀胱炎

出血性膀胱炎とは
  • 肉眼的血尿を主訴とし,膿尿や細菌尿が存在しない膀胱炎の総称.
  • 急性細菌性膀胱炎と比較して一般に難治性.

出血性膀胱炎の病態 臨泌.2013;67(4):301-302.

膀胱粘膜が障害されることがグリコサミノグリカン (GAG)の障害と同義. 

出血性膀胱炎の原因 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
  • 薬剤性では,免疫抑制薬や抗癌薬として使用されるシクロホスファミド,その誘導体であるイホスファミドなどがしられるものの,その他薬剤でも生じる.
  • 本症は一般的に用量・濃度・接触時間依存性に起こるが,低用量の内服でも長期にわたれば遅発性に起こる
鑑別疾患 臨泌.2015;69(4):40-44.
  1. 移植患者におけるウイルス性膀胱炎
  2. 放射線性膀胱炎
  3. 急性細菌性膀胱炎・慢性膀胱炎の急性増悪 
  4. 尿路結石
  5. 泌尿器科悪性腫瘍
  6. 婦人科・消化器系悪性腫瘍の膀胱浸潤
  7. 悪性リンパ腫・白血病の膀胱浸潤
  8. 間質性・アレルギー性膀胱炎
  9. 原疾患(悪性腫瘍)増悪による DIC

出血性膀胱炎の診断 臨泌.2015;69(4):40-44.

治療前におこなう検査
  • 腎機能評価 (BUN、クレアチニン、クレアチニンクリアランス、電解質、尿pH等)
  • 尿一般検査、尿沈渣、尿培養
  • 腎尿管膀胱単純エックス線撮影(KUB)
  • 腎膀胱超音波検査(水腎・結石の有無確認)・残尿測定(膀胱超音波)
  • 排尿状態の問診(過活動膀胱・前立腺肥大症の症状評価表)

症状・身体所見・検査所見
  • 肉眼的血尿,排尿痛,残尿感,頻尿および尿意切迫感などの膀胱刺激症状は必発.
  • 膀胱収縮により亀頭部に放散痛を感じることも.
  • 軽症では顕微鏡的血尿,中等症では肉眼的血尿と時に排尿時に凝血塊の排出.
  • 重症では膀胱内の凝血塊により膀胱タンポナーデ・   尿閉の状態となり,膀胱痛を生じる.
  • 膀胱タンポナーデの状態では下腹部の痛みと膨隆を認める.
  • 尿検査所見として尿潜血を認める。尿細菌培養は陰性,尿沈渣では薬剤による化学的作用による尿路上皮細胞の変性を認める.
画像検査
  • 腹部超音波検査やCT では全周性に膀胱壁の不整・肥厚の所見を呈する.
  • 出血の程度が強い場合は膀胱内に凝血塊が確認される.
  • 排泄性尿路造影では膀胱壁の不整,萎縮膀胱,水腎・水尿管を示す.
  • 膀胱鏡は確定診断目的.膀胱粘膜の発赤,浮腫,び らん,潰瘍化,血管の怒張と蛇行および粘膜からのびまん性の出血などの所見がある.
病理検査
  • 尿細胞診では細胞径の増大,球形〜紡錘形細胞または変形細胞,細胞核の増大,クロマチンの濃縮や構造の不整,核崩壊,細胞質内の空胞変性など多彩な像を呈する。

治療 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
①軽度の出血
・ヘマトクリットの低下がないもの
・膀胱の生理食塩水持続灌流や硝酸銀,ミョウバンの膀胱内注入でコントロール.
②中等度の出血
・数日でヘマトクリットが減少し,6単位以下の輸血を必要とするもの
・血塊により尿路が閉塞することもある.
・治療は血塊除去,膀胱の生食持続灌流で再度血塊による閉塞が起きないようにする.
・ミョウバン,硝酸銀の膀胱内注入
・プロスタグランジンの膀胱内注入も考慮.
③重度の出血
・生理食塩水の灌流や膀胱内注入に反応せず,6 単位以上の輸血を必要とするもの.
・ホルマリンの膀胱内注入による固定を考慮.
・膀胱を支配する動脈塞栓術も考慮.

内服薬:臨泌.2015;69(4):40-44. 臨泌.2013;67(4):301-302.
・プレドニゾロン 10 mg 7 日間  
・スプラタストトシレート(アイピーディー )3 カプセル 分 3 食間  
・クエン酸塩(ウラリット )3 包 分 3 食後

膀胱持続還流 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
  • 膀胱内の凝血塊を洗浄し除去
  • 多孔式の尿道カテーテルを留置し、生理食塩水で持続灌流
  • 出血が持続する場合は、麻酔下に膀胱鏡を挿入し、直視下に凝血塊を取り除きつつ、出血点を止血するようつとめる。できるだけ、膀胱粘膜面から凝血塊を取り除く。

高圧酸素療法 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
  • 実施時の気圧は徐々 に 2~2.5 気圧まで上昇させ、1 セッション 90 分から 2 時間で30~60セッションまで予定
  • 高圧酸素療法は一般に放射線性の出血性膀胱炎に行われる.
  • 薬剤性に対して実施した報告はないが有用性が示唆される.

ミョウバン 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
  • 1%のミョウバン水で膀胱持続灌流をする
  • あるいは、400gのカリウムミョウバンを 4L の滅菌水に溶解し、この溶液 300mLに3Lの0.9%生理食塩水を加え灌流液とする.

プロスタグランジン 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎
  • PGE2 0.75mgを200mLの生理食塩水に溶解して膀胱内に注入し、4時間経過観察.
  • 肉眼的血尿がとまるまで毎日行うが、多くの患者は24時間以内に血尿が軽快する.
  • 膀胱刺激症状はすべての患者に生じる
  • 血管上皮に作用し、血小板を凝集し血管を収縮させる。粘膜と粘膜下の血管の平滑筋を収縮させることで止血作用があると考えられている


参考文献)
臨泌.2015;69(4):40-44.
臨泌.2013;67(4):301-302.
厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血性膀胱炎




 

2017年7月1日土曜日

しゃっくり

一般概論
  • 横隔膜の筋群が不規則かつ急激な痙攣性の攣縮を反復する現象.
  • しばしば補助呼吸筋の同様な攣縮を合併し,急激な吸気に続いて吸気時の声門の反射的閉塞が出現し,独特の音が発生する.
  • 一過性の吃逆は良性の生理的反応であるが,それが長引いたり繰り返したり,ほかの随伴症状を呈する場合は,重大な疾患が潜んでいる可能性がある.
  • 2日以内で停止するものを急性吃逆,2 日以上続くものを慢性吃逆,1カ月以上続くものを難治性吃逆と呼ぶ.
  • 48時間以上続く場合は,難治性・遷延性吃逆として鑑別を行うべき.

病態生理 medicina.2017:54(6); 824-828.

  • 吃逆は反射運動で,刺激受容器からCPG(central pattern generator)に至る求心路(鼻咽頭背側の刺激受容器から延髄疑核近傍網様体にかけての求心路)に何らかの刺激(物理的・化学的刺 激)が加わるとCPGへ刺激が伝わり,そこで横隔膜収縮と声門閉鎖という運動のパターンが形成され遠心路から効果器(横隔膜と声門)へ伝わって吃逆運動が起きる.


病歴
  • GERDが最も多いため,食事の内容や時間,また食後の習慣(食後3時間以内の横臥,夕食後から就寝までの時間が短い)について聴取.胸やけ,げっぷ,上腹部痛などの症状を伴う.
  • 毎日飲酒している症例も多くみら れる.食事内容(高脂肪食)や間食(チョコレートや コーヒーなど),炭酸飲料など,誘発要因の摂取状 況も聴取する.脳幹病変が原因の場合は脳神経 症状や四肢体幹の症状,球麻痺症状などが聴取 される場合もある.過去の病歴や投薬歴,健康食品やサプリメントなどの摂取歴
  • 大量飲酒やコーラ多飲,黒酢飲用など,生活習慣に関連する吃逆の発生も稀ではない.
  • ストレスによる吃逆誘発は, ストレスによる副腎皮質ホルモン分泌増加が関与していると考えられる . 副腎皮質ホルモンは脳内でGABAに対し抑制的に作用し,ストレス(肉体的・精神的)やステロイド投与は吃逆に対し促進的.medicina.2017:54(6); 824-828.

身体所見
  • しゃっくりが横隔神経痙攣であることから,頸部腫瘤などによる横隔神経圧迫を見逃さない
  • 中枢神経障害では脳腫瘍,耳鏡診察では外耳道異物の有無,一方,全身所見では尿毒症などの所見をみる
  • 吃逆の中枢は延髄に存在するため,延髄の病変に伴って出現することがある為,日常の診療では咽頭のカーテン徴候が脳幹病変発見の契機になることがあり,注意して観察する.

検査所見
  • 詳細な問診と身体診察を行って原因がはっきりしない場合,採血や画像検査などを行う.
  • 採血では CBC,電解質,肝機能,腎機能などを,胸部X線撮影,心電図,腹部エコー.


鑑別診断 JIM.2009:19(8); 600-604.

治療
・GERD が原因となって発生している難治 性吃逆の場合は症状の改善に数カ月間要する場合が多い.medicina.2017:54(6); 824-828.
・睡眠薬や抗不安 薬は有効でないことが多く,反対に症状を悪化させていることさえある.medicina.2017:54(6); 824-828.
・疾患の内容による差異や薬剤に対する症例ごとの反応性の違いはあるが,GABA-B 受容体作動薬であるバクロフェン(リオレサールR ,ギャバロンR ) は自験例で有効率が約 90%と効果が優れている.medicina.2017:54(6); 824-828.


臨泌.70(4)/285-287.

非薬物的治療 看護教育.2001;42(7):540-541.  medicina.2004;41(7):1104-1106. 臨泌.2001;55(4).293-5.
咽頭神経叢を刺激し,迷走神経の求心路をブロック
  • 舌を牽引する.
  • スプーンで口蓋垂を圧迫する.
  • 経鼻カテーテルを咽頭内へ挿入する.
  • 砂糖スプーン一杯を水無しで服用させたり,氷片・氷水・レモン水・酢を服用させる.
  • エーテルやアンモニアで微咽頭粘膜を刺激.
副交感神経を刺激する
  • 眼圧迫(Aschner's reflex)
  • 気道を継続的に陽圧にする(ヘーリングブロイエル反射を用いる)
  • 鼻をくすぐる,バルサルバ法,息をこらえる,甲状靭帯の圧迫,5%CO2の吸入,ペーパーバック法
横隔神経の圧迫
  • 胸鎖乳突筋を鎖骨付着部直上で横隔神経を2−3分強く圧迫する.
横隔膜への直接刺激
  • 心窩部に氷かからしを塗る.(刺激物の貼付)
  • 膝を胸のほうに引っ張る,または横隔膜を圧迫するために上体を前のほうに曲げる.
その他
  • 24時間の絶飲食.
  • アルコール性のしゃっくりは,苦いジュースの中に浸したレモンの切れ端を咬むと消える事がある.
  • 胃膨張の場合は,減張の目的で胃管チューブを挿入する.


引用文献)
JIM.2009:19(8); 600-604.
medicina.2017:54(6); 824-828.
看護教育.2001;42(7):540-541.
medicina.2004;41(7):1104-1106.
臨泌.2001;55(4).293-5.
臨泌.70(4)/285-287. 

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