2017年7月13日木曜日

サイトメガロウイルス感染・サイトメガロウイルス腸炎

サイトメガロウイルス Gastroenterol Endosc 2010;52:221-30.
  • CMVはヘルペス科のDNAウイルスで,ヒト以外には感染せず,ヒトからヒトへの伝播には密接な接触を必要とする.
  • CMVの感染様式は母子間,性的,医原的に分けられる.
  • 母子間では子 供の時期に胎盤,産道,母乳などから感染する. 性的感染は大人になってからの初感染が多く,精液,子宮頚管・膣分泌液などから感染する.医原的は移植,輸血などにより感染するが,本邦では多くが産道感染により初感染を受け,終生持続感染する.
  • 多くは不顕性感染で成人の抗体保有率は 60~90%
  • 一度感染するとウイルスは生体内に生涯にわたって潜伏する
  • 潜伏したウイルスは宿主の免疫力の低下により再活性化する.
  • 思春期以降に初感染を受けた場合は伝染性単核球症様の症状を呈することが多くCMV 単核症と呼ばれる.この場合にもCMV腸炎を合併することがある.


サイトメガロウイルスのハイリスク患者、主要徴候、部位 Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.


  • 部位については67%が下部消化管とされる Curr Gastroenterol Rep (2012) 14:334–342
  • エイズ患者の場合、CMV疾患はCD4リンパ球が100/mm3以下の場合に増加する. Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.
  • リスクとなるステロイドの量に関しては、調べた限りでは不明.
診断algorithm
・エルゼビアに良いアルゴリズムがあったので、参照。
 
以下、up to dateの翻訳
・サイトメガロウイルス腸炎では、血漿や全血PCRでCMVが陰性であったとしても除外することが出来ない。
・PCRのCMV腸疾患に対する感度は85%、特異度は95%である。
・CMV腸疾患患者の平均血漿CMVコピー数は38334 copies/ml。
・ただしCMV腸疾患と生検で診断した患者のうち15%は血漿からCMV-DNAを検出することができない。

・便検体からCMVを培養することはCMV腸炎の診断においては無意味。 

ただし2010年の系統的なレビューではPCRは感度91%としている。
・言わずもがな、組織診断は特異度100%。Turk J Gastroenterol. 2010 Mar;21(1):83-6.

推奨されうる検査は次の順となる.Ann Intern Med. 1993;119(9):924-935.
  • CMV感染のウイルス学的診断は,血液ではPCRによる血中 DNA の証明,血液中の白血球中抗原(アンチゲネミア)の証明,抗体検査ではIgM抗体あるいはペア血清でのIgG 抗体の有意な上昇.
  • 最も用いられるのはアンチゲネミア法で,1個/5万細胞以上を陽性と判定するが,陰性であるからといって CMV感染は否定できない.
治療 Curr Gastroenterol Rep (2012) 14:334–342
・膠原病患者、炎症性腸疾患患者(IBD)、癌患者、薬剤による免疫機能低下患者、明らかに基礎疾患のない患者におけるCMV腸炎の治療は、決まった見解はない。
・ステロイド、免疫抑制薬使用患者は減量、中止を考慮し、他の患者は、症状やCMV血症を考慮して治療すべきかを決定することが推奨される。

免疫抑制患者でのサイトメガロウイルス感染症の発症リスク。
糸球体疾患を有する患者に対して免疫抑制を行った133名のretrospective cohort study. Int Urol Nephrol. 2014 Dec;46(12):2357-60.
・発熱・倦怠感・筋痛・咳嗽・喀痰・下痢・白血球減少・肝酵素異常・肺炎を免疫抑制中に発症した患者に対してCMV DNA PCRが行われた。
・1000copies/μL以上を陽性とされている。 
・シクロホスファミド+ステロイドはCMV感染症の発症リスクとなる。
・有意差は出ていないが、MMFではCMV感染症を発症することはなかった。
・その他、多変量解析でクレアチニンおよび年齢がCMV感染症を発症させるリスクと判明している。
・CMV感染症は免疫抑制剤開始後5ヶ月の間にみられると言われている。

サイトメガロウイルス腸炎 
潰瘍形成機序には2つの説がある.Gastroenterol Endosc 2010;52:221-30.
  1. 血管内皮細胞でCMVが活性化増殖し,炎症細胞と血管内皮の巨細胞化により血管内腔が狭小化し,粘膜に虚血性変化が生じるという説
  2. 既存の潰瘍にCMVが二次的に感染する
  • 1の機序が主と考えられている.
  • 潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎に合併する CMV腸炎は2の機序の可能性が考えられる.
  • 潰瘍性大腸炎に関してはCMV感染が重症・難治化に関与していることが知られている.

  • 病変部位は多くは区域性であるが,全大腸の場合もある.
  • 区域性の場合,右側に多いとする報告と左側に多いとする報告がみられる. 
  • 小腸での好発部位は終末回腸であり,内視鏡検査の際には終末回腸の観察が必要である.

  • 内視鏡像の特徴は多彩な潰瘍が多発することであり,潰瘍は形や大きさや深さも様々とされている.
  • 発赤,びらん,アフタ様潰瘍,不整形潰瘍,円形潰瘍,地図状潰瘍,打ち抜き様潰瘍,帯状潰瘍,巨大潰瘍,縦走潰瘍,横走潰瘍,粘膜脱落,偽膜様病変などが報告されている.

  • CMV腸炎を疑った場合,組織の核封入体,酵素抗体法によるCMV抗原の検出,血中アンチゲネミアの測定を行う.
  • 病変部組織検査では,HE染色による核封入体の証明,酵素抗体によるCMV抗原の証明,PCRまたはin situ hybridizationによる組織中のDNAの証明など.核封入体の検出は細胞に感染しているCMVの証明となり,感染症と診断できる.潰瘍底からの生検での陽性率が高い.


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