2017年7月7日金曜日

ステロイド性骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症の発症機序
ステロイドの骨組織への直接的な影響 
  • ステロイドの骨形成への影響
  1. 骨芽細胞の増殖と分化の抑制 → 骨芽細胞数の減少
  2.  骨芽細胞のアポトーシス誘導 → 骨芽細胞の寿命短縮
  3.  骨芽細胞による骨基質合成の低下
  • ステロイドの骨吸収への影響 

  1.  破骨細胞分化抑制因子 OPG 産生抑制、破骨細胞分化誘導因子 RANKL 産生亢進 → 破骨細胞の分化・活性化を促進(一部 controversial)
  2. 破骨細胞のアポトーシス抑制 → 破骨細胞の寿命延長
  3. 骨表面での破骨細胞数増加
ステロイド性骨粗鬆症の特徴
  • 骨密度はステロイド開始後短期間で減少し、骨脆弱性が生じる
  •  高い骨密度でも骨折を起こしやすい(ステロイド性骨粗鬆症におけるYAM の 80%の骨密度の患者の骨強度は、原発性骨粗鬆症におけるYAM の 70%の骨密度を示した時の骨強度に相当)J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 既存の骨折がある患者では、新規骨折リスクのオッズ比が 5.2 ~7.9 倍と非常に高い J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 2.5mg/日未満の少量ステロイドでも脊椎椎体骨折のリスク増加あり(1.55 倍)J Bone Miner Res 15 : 993-1000, 2000.
  • 2.5mg/日以上使用例では投与開始後わずか 3 ~ 6ヶ月で骨折リスクが最大に達する Osteoporosis Int 13 : 777-787, 2003
  • 20mg/日を超えると骨折リスクは急激に増大 J Bone Miner Metab23 : 105-109, 2005.
  • 骨折を回避するための安全なプレドニゾロン1日投与量を算定すると71μg /日であったと報告されおり、安全な治療用量はないと考えざるを得ない  J Intern Med, 254:486-493, 2003.
  • 投与中止後骨折リスクは低下していくが、中止後 2 年では非投与例と同じレベルまでは低下しない J Bone Miner Res 15 : 993-1000, 2000.
  • 日本人膠原病患者を対象にした前向き研究の結果が報告され,骨吸収亢進はステロイド開始後1週間から発生し,ステロイド開始後早期からのアレンドロネートとアルファカルシドールの併用療法の有用性が示された.J Bone Miner Metab. 2016 Nov;34(6):646-654.

ステロイド投与に拠る骨折の発生率と,用量毎の骨折リスクJ Bone Miner Res. 2000 Jun;15(6):993-1000.

ステロイド開始後,骨折発症リスクは増大 Osteoporos Int. 2002 Oct;13(10):777-87.

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のアルゴリズム(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015)
・ステロイド開始後の骨量減少は最初の数カ月が 最も高いため,早期からの薬物療法が望まれる。
・アレンドロネートとリセドロネートは,ステロイド性骨粗鬆症の骨密度に対する有意な一次予防効果および 二次予防効果が示され ,椎体骨折の有意な抑制効果も報告されており,第一選択薬である.
・第一選択薬が禁忌,早期不耐容,効果不十分 などの場合に使用.
・活性型ビタミンD製剤のアルファカルシドールとカルシトリオールは,ステロイド骨粗鬆症において単一試験での効果は明らかではない.
・消化器症状やコンプライアンス不良で経 口薬の投与が困難な場合は,アレンドロネートの点滴静注製剤や静注剤であるイバンドロネートを考慮.
・既存骨折があり,高用量のステロイドを服用している閉経前女性に限って,アレンドロネート,リセドロ ネート,テリパラチドを推奨.ArthritisCare Res (Hoboken).2010;62:1515-1526.

経過観察ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療. ガイドライン:2014 年改訂版.
・胸腰椎単純レントゲン撮影,骨密度測定を半年から1年毎に行う.
・GC投与量の変化を考慮し,定期的に骨折リスクをスコアで評価.

ステロイド性骨粗鬆症薬物療法の推奨 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療. ガイドライン:2014 年改訂版.
ビスフォスフォネート製剤
アレンドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした試験で、プラセボ群と比して腰椎骨密度は 1 年で 3.3%増加し、新規椎体骨折の頻度を1 年で 41.5%減少させ、2 年で 89.7%減少させた。Arthritis Rheum. 44 : 202-211, 2001. Arthritis Rheum 52, S570, 2005.
リセドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした試験で、腰椎骨密度は 2.5 ~ 3.7%増加し、新規椎体骨折の頻度を 62 ~68%減少させた。J Bone Miner Res. 15 : 1006-1013, 2000.
エチドロネート
  • ステロイド性骨粗鬆症患者を対象とした 1 年間の試験で、プラセボ群と比して腰椎骨密度は 3.8%増加し、新規椎体骨折の相対危険率は 43%低下した。N Engl J Med. 7, 337 : 382-387, 1997. J Rheumatol. 31 : 163-166, 2004.

活性型ビタミンD3 製剤 
  • RCT のメタ解析で、無治療やカルシウム製剤あるいはその他のビタミン製剤に比べて腰椎骨密度の維持・増加や腰椎骨折率においてビスフォスフォネート製剤には劣るが有効であることが報告された。Osteoporosis Int 15, 589-602, 2004.

ビタミンK2 製剤 
  • 本邦における縦断研究で、骨折予防効果が報告された。Osteoporosis Jpn11 : 11-14, 2003.

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