2017年6月30日金曜日

CIPS カルシニューリン阻害薬誘発疼痛症候群

CyAを使用中の皮膚筋炎患者が,全身の疼痛を主訴に来院しました.
TAC投与中にも同様の症状があり,上記疾患が疑われていたため,調べてみました.

概論
・2001年,CI使用中の臓器移植後患者において原因不明な両下肢を中心とした激痛を呈する症候群をCIPS として提唱された.Transpl Int. 2001;14(1):16-23.
・頻度としては腎移植者に於いては2-14%の患者で生じる. Joint Bone Spine. 2004;71:157–9.
・カルシニューリン阻害薬(CIs),具体的にはシクロスポリンA(CsA)やタクロリムス(FL506)を用いた際に生じる稀な合併症.Ann Hematol. 2017 Jul;96(7)-1207-1208.
CI が血管内皮細胞においてエンドセリンを放出させることで血管収縮を生じ,トロンボキサン A やプロスタサイクリンなどを介して血管内皮を損傷することが 報告されており,骨髄における血管炎が原因の1つではないかと考えられている.日消誌.2013;110:1783-1789.
・シクロスポリン濃度 >200 ng/mL及びタクロリムス濃度 >11 ng/mLがCIPSの発症と関係するという報告もあるが,規則は無いとも言われている.Transpl Int. 2013; 26(8):e71-e73.
カルシニューリン阻害薬はグリア細胞に選択的毒性を有しており,オリゴデンドロサイトのアポトーシスを引き起こす.またGABA受容体及びNMDA受容体の活動性を変える働きもあり,CIPSでの神経障害と関係している可能性がある.Prog Transplant. 2016 Sep;26(3):224-6. 
脊髄でのグルタミン受容体の活動性をCIsが上げることがしめされており,動物モデルでは脊髄レベルでグルタミン受容体の活動をブロックすることで疼痛に対する疼痛過敏性を減少することを証明している.J Physiol. 2014;592(pt1):215-227.

症状
・鋭利な金属で刺されるような,または電気が走るような発作性の疼痛で,持続時間は短いが間欠的に反復し,いかなる鎮痛薬にも抵抗を示すことが多い.消誌.2013;110:1783-1789.

下肢疼痛の鑑別診断 Transpl Int. 2001;14(1):16-23.

画像診断
  • X線:典型的には陰性だが,patchy osteopeniaが認められることがある.Skeletal Radiol. 2013 Sep;42(9):1311-5.
  • 骨シンチグラフィーでは対称性の膝及び踵部の集積が認められ,80%の症例で陽性となる.Skeletal Radiol. 2013 Sep;42(9):1311-5.
  • MRIでは関節周囲及び,軟骨下にT1WI low, T2WI highの浮腫像を認める(感度80%).Skeletal Radiol. 2013 Sep;42(9):1311-5.
  • 20%で無症状の膝や踵でも画像的変化が認められる.Skeletal Radiol. 2013 Sep;42(9):1311-5.
  • 画像的鑑別としては骨髄浮腫症候群と骨粗鬆症,骨壊死と不全骨折,RSD.Skeletal Radiol. 2013 Sep;42(9):1311-5.

治療
・NSAIDs(ジクロフェナク,イブプロフェン等)は無効.Transpl Int. 2001;14(1):16-23.
CCBではニトレンジピンは30分以内に疼痛の改善を認めるという報告があるが,ニフェジピンは効果は無いと言われているTranspl Int. 2001;14(1):16-23.
CIsのスイッチとプレガバリンのコンビネーションでGVHD患者のCIPSを早急に改善したという報告がある.詳細な機序は不明.具体的にはプレガバリンを150mg分2で開始し,疼痛改善に伴い漸減Ann Hematol. 2017 Jul;96(7)-1207-1208.もしくは300mg分2として疼痛軽減を認めている.Prog Transplant. 2016 Sep;26(3):224-6.
・疼痛は1〜6 週間で改善するのが大半も,CI中止にもかかわらず神経症状の約 30%が不可逆性の変化をもたらしうる.Br J Haematol. 2003:123;110-113.

cf.2001年から2012年8月までの本邦でのCIPS症例 日消誌.2013;110:1783-1789.

2017年6月27日火曜日

足白癬

総論
  • 足白癬患者が2,100万人,爪白癬患者は1,150 万人いると推定.日皮会誌.2001.111(14): 2101-2112.
  • Trichophyton rubrum(T. rubrum),あるいはT. mentagrophytesが2大原因.
  • T. rubrum 感染の場合はほとんど炎症反応が起きないため,水疱はみられず,掻痒も無いことが多く,さらに単純に角層が肥厚し, 紅斑ないしは軽度の色素斑と鱗屑がみられる程度のことが多い.
  • T. mentagrophytes 感染,特に好獣株の場合,炎症反応が高度で水疱や紅斑などが認められ,掻痒も強いことが多い.
  • 足底や趾間で『皮がむけている』や『かかとがガサガサしている』などの鱗屑や角質増殖の症状が認められた場合は足白癬を考慮する.
  • 爪甲の一部が淡黄褐色に変色したり,表面の白濁や楔状の混濁している場合爪白癬を考慮する.


足白癬
特徴
  • 足白癬は臨床から小水疱型,趾間型,角質増殖型に分類する.
  • 小水疱型:足底,特に土踏まずや足趾に小水疱を認め,時に融合し大型の水疱を形成.かゆみが強い
  • 趾間型:足趾同士が最も密着する第III,IV趾間に認められやすい.鱗屑や浸軟がみられ,かゆみを伴う
  • 角質増殖型:足底全体に鱗屑と厚い角質がみられる.通常両側性,季節に拠る消長がない.水疱はなく,かゆみは乏しい

検査
  • 直接鏡検法が必須.
  • 鱗屑や水疱蓋を検体として角層内の白癬菌を顕微鏡で確認

 直接鏡検
  • 病変部の角質をスライドグラス上に乗せ,KOHを滴下し数分から10分程度加温,顕微鏡下にそのまま観察する手法
  • 足白癬では,小水疱がある場合(アルコール綿で皮膚表面を拭くと,小水疱の発見が容易となる),水疱蓋をハサミで採取し直接鏡検を行えば,ほぼ100 %菌要素を確認できる.
  • 趾間型では菌が検出できないことが多いため,病変の辺縁の角層をメスで擦り取り,検査材料とする.
  • 爪白癬では爪の先端部や表面には真菌がいないことが多く,できるだけ爪の先端を除去し,爪甲下の角質増殖部を検査材料とする.
  • 爪の表面が粗造の場合は,爪の表面からも菌の検出は可能.
  • 皮膚糸状菌の場合,隔壁のある比較的太い菌糸と分節胞子がみられる.
  • 角質細胞がまだよく溶けていないと,細胞と細胞の間が菌要素のようにみえることがある.
  • 顕微鏡のセッティングは,スライドグラスを 乗せるステージの下にあるコンデンサー絞りを調整してコントラストがつくようにする
  • 白癬菌がみつからない場合は,ステロイドなどを外用して炎症を軽減して再検査.
JIM.2004;14(11):940-943.


足白癬の鑑別診断
小水疱型との鑑別
  • 掌蹠膿疱症:両側の足底に無菌性膿疱と落屑を慢性通年性に繰り返す.かゆみ,疼痛に乏しい.
  • 汗疱・異汗性湿疹:手指,足趾の側縁や手掌,足底に小水疱が単発したり,集簇局面を形成しかゆみや発赤をともなう.
趾間型
  • カンジダ性趾間びらん症
  • 紅色陰癬:Corne bacteriumなどによる細菌感染症
角質増殖型
  • 更年期角化症:両側の踵にやや境界不明瞭に角質肥厚.かゆみ・疼痛などの自覚症状に乏しい.
  • 掌蹠角化症:両側の手掌,足底,とくに土踏まず意外に広範囲で著明な角質肥厚が認められる.白癬よりも表面の粗糙,落屑が乏しい.
  • 慢性湿疹

治療
臨床型別に治療法は変わる.
小水疱型
  • 局所の乾燥,清潔
  • 抗真菌外用薬(ラミシール,メンタックス,ニゾラール,マイコスポール,ゼフナート,アトラント)を 1 日 1 回,1〜3カ月程度趾間から足底全体に塗布.
  • 視認できる症状の範囲よりも広範囲に外用する
趾間型
  • 浸軟やびらんが高度な場合は,外用抗真菌薬を当初から使用するとかぶれを起こしやすい
  • まず亜鉛華単軟膏の貼付を行い,浸軟やびらんを改善させてから外用抗真菌薬の塗布を検討.
  • 外用抗真菌薬は小水疱型に準ずる.
  • 外用薬でかぶれを起こす場合は,経口抗真菌薬を併用も考慮.
角質増殖型
  • 角化が顕著な場合は経口抗真菌薬の投与を考慮.

外用して 4 週間しても改善がみられなければ診断が異なるのではないかと考え,皮膚科専門医にコンサルト



爪白癬
特徴
  • 爪白癬の主な症状は爪甲の混濁と肥厚
  • 遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)
  • 表在性白色爪真菌症(SWO)
  • 近位爪甲下爪真菌症(PSO)
  • 全異栄養性爪真菌症(TDO)
  • 白癬菌以外の爪真菌症(爪カンジダ 症,非白癬菌性爪真菌症)

検査:足白癬と同様

治療
  • 第一選択は経口抗真菌薬.テルビナフィ ン(TBF),イトラコナゾール(ITCZ)
  • TBFは1日 125 mg/日を約半年服用.副作用:肝機能異常,汎血球減少などがある.定期的な血液検査を要する
  • ITCZ は爪白癬に対してはパルス療法のみが保険適応.用法・用量は1回200mgを1日2回(1日400 mg)食直後に1週間服用, 3 週間休薬する.これを1サイクルとして,3サイクル繰り返す.投与終了後は爪甲内に薬剤が長期間貯留するため,爪甲の伸長を考慮しながら経過をみる必要がある.
  • ITCZ は併用禁忌薬および注意薬が非常に多いため,服用中の薬剤のチェックを必ず行う.
  • 近年はエフィコナゾール,ルリコナゾール(2週間塗布)の1日1回爪全体に塗布するものがある.


参考文献)
糖尿病診療マスター.2016;14(6): 472-464.
JIM.2002;12(12):1123-1125.
JIM.2004;14(11):940-943.
medicina.2003;40(6):934-936.

medicina.2014;51(5):891-893. 

小児頭部外傷

夜に 小児 の 頭 部 外傷が来て対応した、 というイベントがありました。 小児 の意識障害 客観的評価するには有用だが、判断はなれないと難しい→ 母親にいつもとなにが違うが聞けばよい。 小児 のGCSの取り方。 ・EとMはほぼ同じ ・Vは笑顔で声に反応、物を視線で追えば5 ・あ...