一般概論
- 横隔膜の筋群が不規則かつ急激な痙攣性の攣縮を反復する現象.
- しばしば補助呼吸筋の同様な攣縮を合併し,急激な吸気に続いて吸気時の声門の反射的閉塞が出現し,独特の音が発生する.
- 一過性の吃逆は良性の生理的反応であるが,それが長引いたり繰り返したり,ほかの随伴症状を呈する場合は,重大な疾患が潜んでいる可能性がある.
- 2日以内で停止するものを急性吃逆,2 日以上続くものを慢性吃逆,1カ月以上続くものを難治性吃逆と呼ぶ.
- 48時間以上続く場合は,難治性・遷延性吃逆として鑑別を行うべき.
病態生理 medicina.2017:54(6); 824-828.
- 吃逆は反射運動で,刺激受容器からCPG(central pattern generator)に至る求心路(鼻咽頭背側の刺激受容器から延髄疑核近傍網様体にかけての求心路)に何らかの刺激(物理的・化学的刺 激)が加わるとCPGへ刺激が伝わり,そこで横隔膜収縮と声門閉鎖という運動のパターンが形成され遠心路から効果器(横隔膜と声門)へ伝わって吃逆運動が起きる.
病歴
- GERDが最も多いため,食事の内容や時間,また食後の習慣(食後3時間以内の横臥,夕食後から就寝までの時間が短い)について聴取.胸やけ,げっぷ,上腹部痛などの症状を伴う.
- 毎日飲酒している症例も多くみら れる.食事内容(高脂肪食)や間食(チョコレートや コーヒーなど),炭酸飲料など,誘発要因の摂取状 況も聴取する.脳幹病変が原因の場合は脳神経 症状や四肢体幹の症状,球麻痺症状などが聴取 される場合もある.過去の病歴や投薬歴,健康食品やサプリメントなどの摂取歴
- 大量飲酒やコーラ多飲,黒酢飲用など,生活習慣に関連する吃逆の発生も稀ではない.
- ストレスによる吃逆誘発は, ストレスによる副腎皮質ホルモン分泌増加が関与していると考えられる . 副腎皮質ホルモンは脳内でGABAに対し抑制的に作用し,ストレス(肉体的・精神的)やステロイド投与は吃逆に対し促進的.medicina.2017:54(6); 824-828.
身体所見
- しゃっくりが横隔神経痙攣であることから,頸部腫瘤などによる横隔神経圧迫を見逃さない
- 中枢神経障害では脳腫瘍,耳鏡診察では外耳道異物の有無,一方,全身所見では尿毒症などの所見をみる
- 吃逆の中枢は延髄に存在するため,延髄の病変に伴って出現することがある為,日常の診療では咽頭のカーテン徴候が脳幹病変発見の契機になることがあり,注意して観察する.
検査所見
- 詳細な問診と身体診察を行って原因がはっきりしない場合,採血や画像検査などを行う.
- 採血では CBC,電解質,肝機能,腎機能などを,胸部X線撮影,心電図,腹部エコー.
鑑別診断 JIM.2009:19(8); 600-604.
治療
・GERD が原因となって発生している難治 性吃逆の場合は症状の改善に数カ月間要する場合が多い.medicina.2017:54(6); 824-828.
・睡眠薬や抗不安 薬は有効でないことが多く,反対に症状を悪化させていることさえある.medicina.2017:54(6); 824-828.
・疾患の内容による差異や薬剤に対する症例ごとの反応性の違いはあるが,GABA-B 受容体作動薬であるバクロフェン(リオレサールR ,ギャバロンR ) は自験例で有効率が約 90%と効果が優れている.medicina.2017:54(6); 824-828.
臨泌.70(4)/285-287.
非薬物的治療 看護教育.2001;42(7):540-541. medicina.2004;41(7):1104-1106. 臨泌.2001;55(4).293-5.
咽頭神経叢を刺激し,迷走神経の求心路をブロック
- 舌を牽引する.
- スプーンで口蓋垂を圧迫する.
- 経鼻カテーテルを咽頭内へ挿入する.
- 砂糖スプーン一杯を水無しで服用させたり,氷片・氷水・レモン水・酢を服用させる.
- エーテルやアンモニアで微咽頭粘膜を刺激.
副交感神経を刺激する
- 眼圧迫(Aschner's reflex)
- 気道を継続的に陽圧にする(ヘーリングブロイエル反射を用いる)
- 鼻をくすぐる,バルサルバ法,息をこらえる,甲状靭帯の圧迫,5%CO2の吸入,ペーパーバック法
横隔神経の圧迫
- 胸鎖乳突筋を鎖骨付着部直上で横隔神経を2−3分強く圧迫する.
横隔膜への直接刺激
- 心窩部に氷かからしを塗る.(刺激物の貼付)
- 膝を胸のほうに引っ張る,または横隔膜を圧迫するために上体を前のほうに曲げる.
その他
- 24時間の絶飲食.
- アルコール性のしゃっくりは,苦いジュースの中に浸したレモンの切れ端を咬むと消える事がある.
- 胃膨張の場合は,減張の目的で胃管チューブを挿入する.
引用文献)
JIM.2009:19(8); 600-604.
medicina.2017:54(6); 824-828.
看護教育.2001;42(7):540-541.
medicina.2004;41(7):1104-1106.
臨泌.2001;55(4).293-5.
臨泌.70(4)/285-287.
0 件のコメント:
コメントを投稿